恋ふうせん
受付に着くと、受付の待合い椅子に未知さんがちょこんとうつむいて座っていた。

その横顔は、病人とわかるほどに青白くて、幾分頬がこけているように見える。

「未知さん?お待たせしました。大杉です。」

できるだけ普通な雰囲気で話しかけた。

スローモーションを見ているかのように未知さんは、ゆっくりと顔を上げた。

「咲さん。」

棒読みのような精気のない声。

受付嬢は、普通じゃない未知さんの雰囲気を察して慌てて、

「あちらの商談室にどうぞ。」

とすぐに私たちを一番奥の商談室に案内してくれた。
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