恋ふうせん
「ただ。誰かを傷つけてうまくいった関係は、絶対に壊れるから。それだけは、あなたに伝えておきたくて。」

背筋がぞくっと震える。もう何も言えなかった。

今の私は未知さんに完敗だ。

未知さんの言うことは正しい。

未知さんは、白井さんの前の奥様を傷つけて一緒になった。

でも、それはうまくはいかなかった。

私のやってることは、結局、以前の未知さんと同じ?

あれだけ嫌悪感を抱いた未知さんの二の舞を踏もうとしているの?

未知さんは、椅子をひいてゆっくり立ち上がると、

「さようなら。」

と、わずかに口元をゆるめて、商談室から出ていった。
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