恋ふうせん
白井さんは、短いため息をついた。

「明後日、ここを出ます。未知は昨日荷物をまとめて出ていきました。美由紀は幼稚園で、今ここにいるのは僕だけです。」

だから、何?

私はじっと声を殺した。

この緊張を糸を少しでもゆるめると、今まで我慢していたものが全て破裂しそうだったから。

「会いたい。」

電話の向こうで白井さんの絞るような声が聞こえた。

白井さん、震えてる?

何もかも失って、たった一人で今部屋にうなだれている姿が見える。

誰かに助けてほしくて、でも、それもできない白井さんの姿が。

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