恋ふうせん
白井さんは、既に玄関の前に立っていた。

少しやつれた顔で、じっとこちらを見ている。

私は、何も言わず、そのまま白井さんの胸に飛び込んで、ぎゅっと抱きしめた。

強く強く。

会えなかった時間を取り戻すかのように。

そのまま、白井さんの家に入った。

玄関でじっと見つめ合う。

白井さんの顔がゆっくり近づき、キスをした。

毬藻公園でした別れのキスとは違う、ようやく巡り会えた懐かしい愛しいキスだった。

「咲さん、どうして・・・。」

白井さんが私の目をじっと見つめて聞く。
< 192 / 221 >

この作品をシェア

pagetop