恋ふうせん
白井さんは優しくて、温かくて、愛おしかった。

どうしようもないくらいに私は何度も白井さんを抱きしめた。

気持ち以上の何かが私を征服している。

ベッドの上で2人は何も言わずに仰向けになった。

しっかり手をにぎりあったまま。

「どうして、会わないって決めたのに北海道に行くことにしたの?」

私は天井を見つめながら聞きたかったことを聞いた。

「咲さんの近くにいたかったから。」

ぷぷっ。

私は思わず吹き出した。

なんだか高校生の会話みたいでおかしい。

私たちはもういい大人のはずなのに、あまりに当たり前すぎる白井さんの返事にまた愛おしさがあふれてくる。

人間が本来もつ、純粋な気持ち。
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