恋ふうせん
「うん、そうね。逃げてるんだと思う。私は欲張りなのよ。きっと。」

「ご主人や、子ども達のことは、絶対咲さんから切り離せないんだね。」

白井さんの前で、それを肯定するのを阻む自分がいる。

私は何も言わずに、ただじっと白井さんを見つめた。

白井さんは、そっと私の肩を抱き寄せて、柔らかいキスをした。

「僕は、そんな咲さんだから好きなのかもしれない。」

その言葉は、私を安堵させた。

私は、今までのまま。

それでも、白井さんは愛してくれる。

そんな、都合のいい話ってある?

あまりにもうまくいきすぎて怖い。

神様は、ここまで私を好き勝手させてくれるはずないもの。
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