恋ふうせん
治療室の扉から出てきた黒縁の眼鏡をかけた穏やかそうな先生が、私たちに会釈をした。

「中でお話させて頂いてよろしいですか?」

そばにいた看護士さんに導かれて、診察室に入った。

私は先生の話を待ちきれず、入るやいなや聞いた。

「航太は、うちの息子はどんな具合なんでしょうか?」

先生はちらっと私の方を見た。

少し冷たい視線に、胸が苦しくなる。

一番緊急で大事な時にいなかったんだもの。

当然だよね。
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