恋ふうせん
先生はカルテに目をやりながら、少しため息をついて話を続けた。

「原因なくしてこのようなひどいぜんそくは考えられないんですが・・・。家庭不和や、暴力、そういったことでも敏感に発症するものです。お母さんがしっかり子どもを守ってやらないと、子どもはすぐに体に変調をきたしますから。気をつけてあげて下さい。」

先生の言葉ひとつひとつは、私の胸に重く突き刺さっていった。

「とりあえず、今日一日このまま病院で様子を見て、問題なければ明日退院して頂いて結構です。とにかく、航太くんには今精一杯の愛情を注いであげて下さい。それが回復の一番の近道です。」

航太。

いつも飄々と、我感せずって感じだったのに、その小さなからだでストレスをいっぱいため込んでいたんだね。

お母さんに甘えたかったのに、心ここにあらずの私に甘えられなかったんだね。

ごめん・・・。

これは、神様からの代償。白井さんにうつつを抜かしていた私への。
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