恋ふうせん
私はただ黙ってうつむくしかなかった。

航太にどんな顔して会えばいい?

実母は、私の肩に手を置いた。

「もう、いいから。早く航太のところへ行ってあげなさい。」


航太は、白いベッドの上で点滴をつけたまま、静かに寝ていた。

頬には涙の跡がまだ残っている。

苦しかったんだね。

そんな苦しいのに、お母さんがそばにいなくて辛かったよね。

航太の涙を跡をそっと人差し指でぬぐう。
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