恋ふうせん
白井さんは、玄関に入ってくると、私をしっかり抱きしめた。

「美由紀ちゃんは?」

抱きしめられたまま尋ねる。

「今、自分の部屋を片づけてるよ。大丈夫。すぐに戻るって言ってあるから。」

美由紀ちゃんが一人寂しく部屋の片づけをしている。

きっと我慢してる。

何も言わずに小さい体で親の勝手を全部引き受けてる。

「だめ!」

私はそう言いながら、白井さんの腕をほどいた。

「もう、だめよ。やめよう。子ども達に辛い思いをさせるのはもう耐えられない。親の勝手で親の都合で。」

「咲さん・・・。」

「ごめんなさい。」

涙が頬をつたう。
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