恋ふうせん
髪の毛を右手でくしゃくしゃっとして、また私の方に向き直った。

「そっか。ま、いいや。とりあえず、俺も今晩ここに泊まるよ。」

「いいよ、仕事いそがしいんでしょ?私がここに泊まるから、もう仕事に戻って。」

旦那はじっと私の目をみつめた。

何か言いたそうな目。

「いや、俺も一緒にいる。航太も、それにお前のことも心配だからな。」

旦那はそう言うと、また視線をそらして私の頭に大きな手のひらをポンと置いた。

久しぶりに感じる、旦那の大きな手。

温かい。

私のことも心配って、ひょっとして、全てわかってたの?

まさか、そんなことはないよね。

でも、その大きな手のひらから伝わるぬくもりは、旦那の懐そのものだった。

心の中で

「ありがとう」とつぶやいた。
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