恋ふうせん
そのまま、2人で航太の病室に入った。

「あ、お母さんとお父さん!」

入るやいなや、看護士さんとしゃべっていた航太が嬉しそうに顔を向けた。

「航太、大丈夫か!父さん心配で北海道から飛んできたぞ。」

旦那はそう言うと航太にかけよって抱きしめた。

「大丈夫だよー。息ができなかった時はびっくりしちゃったけどね。」

努めて明るくしゃべっている航太を見ていると、また泣けてきそうだった。

「お母さん、迎えにいけなくてごめんね。しんどかったね。」

私はなんとか涙を押し殺して、航太の手をにぎった。

「本当だよ!ずっと待ってたのに。でも、いいよ。今ここにいてくれるから!」

旦那はうなずきながら優しい目で私の方を見つめた。

「ありがとう。航太はえらいね。お母さんも航太に負けないようにしっかりしなくっちゃ!」

いつものように明るく笑った。

幸せだった。

心から安らげる場所がそこにあった。

誰にも悪びれることのない、全てから祝福される幸せが。
< 216 / 221 >

この作品をシェア

pagetop