恋ふうせん
一人でショッピングした帰り、ふと見覚えのある洋館風の建物にでくわす。

白井さんが勤務しているホテルだ。

思わず、ホテルの前で足が止る。

ホテルの扉の向こうにいるかもしれない。

その扉を開ければ、白井さんのあの優しい笑顔に会えるかもしれない。

でも、自分から足を踏み入れることはできないよね。

もし、偶然に足を踏み入れることがあったら、今度こそ縁があるのかしら?

なんてね。

一呼吸おいて、青い空を見上げながら、家に帰るべく一歩足を踏み出したその時。

「咲―!!」

聞き覚えのある声が聞こえた。

声の方を見ると、智子が嬉しそうに手を振っている。
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