恋ふうせん
「奥様、私が白井さんと同じ会社に勤めてることご存知なかったんですね。

余計な事お話しちゃってすみません。」

私はハンバーグを切り分ける手をとめて、頭を下げた。

上目ずかいで白井さんを見上げると、白井さんは目を伏せて何か考えているようだった。

そして、ふぅと軽くため息をついて、私の方に向き直った。

「いや、こちらこそご心配おかけして申し訳ありません。

仕事の話は極力家内には伝えないようにしていて、もちろん大杉さんのこともまた機会
を見計らって言おうと思ってたんです。

前にも話しましたが、うちの家内、結構神経質というか、とりわけ僕に関しては。」

白井さんは、前髪をかきあげると苦笑した。

< 24 / 221 >

この作品をシェア

pagetop