恋ふうせん
「おおっ。いいにおいがするねぇ。」

旦那が新聞を脇に挟んでやってきた。

「チーズケーキか。今日、白井さんちに持っていくの?」

「うん、そう。」

「おいしそうに焼けてるじゃない。俺も食べたいなぁ。」

そういえば、旦那はチーズケーキが大好物だったっけ。

新婚時代に1度作ったっきりだったよね。

「これはダメ。またいつか作ってあげるから。」

「ふん。『いつか』っていつになるんだかねぇ。」

そう言い捨てると、旦那はソファーに座る航太の横にどかっと座って新聞を広げた。

今日は適当にごまかして一人お留守番してもらうことになった旦那。

ちょっとかわいそうだし、来週末にでも早速チーズケーキ焼いてあげようっと。

約束は12時だった。

未知さんお手製のランチとクッキーでもてなしてくれるとのこと。

そんなことより、休日に白井さんに会えることにときめいている私。

いいのかねぇ?

「お母さん、早く行こうよ!」

隆太が玄関の方へ私の手をひっぱっていく。

航太も私の後ろからぺたぺたついてきた。

ああ、今日はこの子たちが一緒でよかった。

なんだか緊張がほぐれる。

エレベーターにのると、白井さんの家がある7階のボタンを押した。

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