恋ふうせん
「いらっしゃい!隆太くん、航太くん、よく来てくれたわね。
さ、どうぞあがって。」

いつになくハイテンションの未知さんに出迎えられた。

やはりとまどいを隠せない私をよそに、子ども達は「わーい」と言いながら家の中に飛び込んでいく。

「スミマセン…。私もお邪魔します。」

そろりと白井さんの玄関に足を踏み入れた。

「いらっしゃい。」

靴をそろえていると、背後で優しいいつもの声がした。

振り返ると、白井さんが真っ白なハイネックのセーターとGパン姿で立っていた。

いつもと違うラフな白井さんに、また心臓がドキドキしだす。

こんなに白の似合う男性が他にいるのかと思うほどに私にはキラキラして見えた。

未知さんはそのまま子ども達が飛び込んでいった居間に早足で向かっていった。

玄関には私と白井さんだけ。

白井さんは少し身をかがめて私の耳元でささやいた。

「今日は家内の勝手で申し訳ありません。」

すぐ近くに白井さんの息を感じて、一瞬呼吸をするのを忘れてしまう。

「あ、いいえ。せっかくのお休みの日にこちらこそお邪魔して申し訳ありません。」

動揺を悟られまいと、ぺこっと頭を下げた。

おそるおそる頭を上げると、白井さんはじっと私を見つめていた。

その視線に耐えきれなくなった私は、白井さんに背を向け居間に入っていった。

なんなの?白井さん、あんな真面目な顔で。

びっくりしたなぁ。

ドキドキする胸を手で押さえながら、

「隆太~、航太~、お行儀よくしないとだめよぉ!」

なんて、品よく叱ってみた。

< 35 / 221 >

この作品をシェア

pagetop