恋ふうせん
キッチンで、二人の話す声が聞える。

何を話しているかまではわからないけど、時折、未知さんが嬉しそうに笑っているみたいだ。

子ども達の方へ視線を送っているけれど、私の耳と気持ちはずっとキッチンの方に向けられていた。

未知さんの笑い声が聞えるたびに、胸がしめつけられる。


私…恋してる?


キッチンから、白井さんがお盆にワイングラスを3つのせてやってきた。

そんな私の気持ちも知らず、いつもの優しい笑顔で、

「大杉さんはお酒大丈夫ですよね?
先日、家内のおじからもらった上等のワインがあるので一緒に飲みましょう。」

と、高級そうなダイニングテーブルの上にグラスを並べた。

< 37 / 221 >

この作品をシェア

pagetop