恋ふうせん
こんな状態でお酒なんか飲んだら、絶対悪酔いする!

そんな醜態、白井さんにさらすわけにはいかない。

しかもワインは、私が最も悪酔いするお酒だわ。

「あ、今日はワインは遠慮しておきます。子どももいますし…。どうぞ、奥様とお二人でお飲みになって下さい。」

私らしくないな、と思いつつ、丁重にお断りしたはずだったんだけど。

「大丈夫ですよ。少々酔われても。僕が責任もって、ご自宅の玄関まで送り届けますから。」

白井さんはそう言うと、居間に置いてある、これまた高級そうなローチェストを開けて、ワインを1本取り出した。

「こうでもしないと、一緒にお酒なんてのめませんからね。」

少し意味深な言い方で。

そして、私の目の前にワインを静かに置いた。

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