恋ふうせん
白井さんは読んでいた本を脇机に置くと、ゆっくり私の方を見た。

そんな視線に耐えきれず、

「未知さんは?未知さんにもお詫びしなくちゃ。」

「未知は、大丈夫ですよ。ただ、あまり体が強くないので、もう先に寝てしまいましたけど。」

「え?!寝てしまったって。今何時ですか?」

急に血の気がひいていった。

私はお昼から何時間ぶっ倒れていたんだろう?

白井さんは、私を気遣って柔らかい笑顔で応えた。

「今、22時回ったところです。お子さんは先に僕がお送りしましたし、ご主人にも事情は説明してありますからご安心下さい。」

うそ!旦那、怒ってないかな…。

結構そういうとこだけは亭主関白だから。

「とりあえず、もう歩けるようでしたらご自宅までお送りしますので、行きましょうか。」

そう言うと、白井さんはさっと立ち上がって、私を見下ろした。

一瞬血の気がひいたのに、また血がじわじわと顔に集まってきてる感覚。

恥ずかしくて、白井さんの顔を見上げられなかった。

私、どう思われちゃったんだろう。

飽きれられてるだろうな。

なんだか涙が出そうだった。

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