恋ふうせん
夜道を二人で歩く。

肌寒い季節のはずなのに、寒さを感じない。

少し頭が重かったけれど、その状態がまた心地よくもあった。

さっきの話題にはあえて触れず、

「未知さんはあまりお体強くないんですか?」

と聞いてみた。

白井さんは、ジーンズのポケットに入れていた右手を口元に持っていき、少し考えてか
ら答えた。

「はい。以前からお酒もそれほどのめませんし、無理な体力を使うと、すぐに熱が出てしまうんです。精神的なものが大きいんですけどね。」

「そうなんですか。だからあんなに華奢なんですね。今日も無理されなかったかしら?」

「ああ、それは大丈夫ですよ。彼女もかなり楽しんでいたし、早めに寝かせて、後は僕がやりましたから。」

「スミマセン。お手伝いもできずに倒れていて…」

「それは、本当に気にしないで下さい。僕は咲さんと一緒にお酒がのめてお話を聞かせて頂いて本当に楽しかったんだから。」

白井さんは、前髪をかき上げて静かに微笑んだ。

この人はなんて、優しい物言いをするんだろう。

白井さんと話していると、心が澄んでいくような気がする。

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