恋ふうせん
ふぅと息を吐いた白井さんは、私の方に顔を向けた。

「さっきお話したことですが、ボクは咲さんを随分前から知ってるんです。」

「え?そ、そうなんですか。会社以外でどこかでお会いしましたっけ?」

私は本当にわからなかった。

白井さんはじっと私を見つめている。

少しうるんだような瞳が月明かりで光ってる。

思わず吸い寄せられるようにその瞳に釘付けになってしまった。

「僕のこと、本当にわかりませんか?」

恥ずかしいと思いながらも、まじまじと白井さんの顔を眺める。

こんな男前、一度見たら忘れないよぉ。

どこかで会ってる?

「ごめんなさい、思い出せないんだけど…」

寂しそうにフッと笑うと、私の正面から視線をはずした。

「やっぱりな。いいんですよ。僕も期待したのが悪かったんです。」

少し肩の力が抜けたのか、白井さんは大きく一つ伸びをした。


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