恋ふうせん
面接官は3名。

一番奥に年配の男性、真ん中に眼鏡をかけた中高年男性、

そして、手前にさっきエレベーターで一緒になった男性がにっこり笑って座っていた。

エレベーターの男性は私の履歴書に目をやりながら、少し照れくさそうにこう言った。

「大杉さんって都マンションにお住まいなんですね。実は僕もなんですよ。」

他の面接官が「ほほう。」と少し驚いた様子で笑った。

私が答える間もなく「僕、白井って言います。僕の家内はご存知じゃないですか?」

「え?あの白井未知さんのことかしら?美由紀ちゃんのお母さん?」

一瞬面接していることを忘れて身を乗り出してしまった。

「ええ!僕は美由紀の父です。いやー、こんなところで同じマンションの奥さんとお目にかかるなんて。なんだかやりにくいなぁ。」

白井さんは頭をぽりぽりかきながら、苦笑した。

他の面接官も「不思議な縁もあるもんだねぇ」とペンを机上に置いて一口お茶を飲む。

今まで張りつめていた面接会場が急にリラックスムードに。

終始和やかな雰囲気のまま私の面接は終わった。

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