恋ふうせん
白井さんの話してくれた大筋はこんな感じだ。


未知さんがホテルに泊まっている時、急な発熱にみまわれた。

その時、お医者の手配や、看病の手伝いを必死にしていた白井さんに未知さんが一目惚れをし、家族公認で二人の交際がすぐにスタートした。

そして、そのまま周囲に流されるように結婚し、今に至ってるという。


「当時から未知は精神的に弱くて。
僕が少しでも仕事で忙しくて連絡がとれなかったりすると、実家で半狂乱になっていたそうです。
普段の未知からじゃ想像もできないけど。
未知のご両親もそんな姿を見続けるのが辛かったのでしょうね。」

「そう…」

詳しくは話してくれなかったけど、未知さんとの結婚には色んなイワクがつきまとってるようだった。

「僕の話、こんな夜更けに聞いて下さってありがとうございました。
咲さんにはどうしても話しておきたくて。」

いつの間にかマンションの入り口に戻ってきていた。

マンションを照らす電光もわずかに弱くなっている。

多分、もう23時くらいなんだろう。

薄暗い光に、白井さんの輪郭が浮かび上がる。

視線がどこにあるかは見えなかったけど、私の心のざわつきが一層波を泡立てて広がっていった。

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