恋ふうせん
ホットケーキをお皿にのせていると、こめかみが昨日のワインのせいでズキンと痛み、白井さんの寂しそうな笑顔がふっと現れてすぐに消えた。

こんな時ですら白井さんを思い出してしまうなんて。

まいったなぁ。

旦那が、新聞を折りたたみながら口を開いた。

「そういえば、白井さんのご主人、初めてお目にかかったんだけど。」

急な「白井さん」の話題にドキッとして、思わずホットケーキをお皿からこぼしそうになる。

「な?聞いてる?」

旦那はいつの間にか真横に立っていて、私の顔をのぞき込んでいた。

「ひゃー!びっくりさせないでよ!」

まじでお皿を落としそうになった私は、軽く旦那をにらんだ。

にらむことで、動揺をかわしたかったからっていうのもあるんだけど。

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