恋ふうせん
「あ、わりいわりい。そうそう、白井さんのご主人ってどこかで見たことあるんだよなぁ。どこだったかはどうしても思い出せないんだけどさ。お前はそんなことない?」

「・・・。」

どう反応していいかわからなくて、思わず黙り込む。

「どこだったのかねぇ?デジャブってやつかな。」

真剣に悩んでいる旦那を見て、吹き出しそうになるのをこらえつつ、

「他人の空似でしょ?あなたも仕事がら色んな人と会うじゃない。きっとそうよ。」

と、なるべくあっさりと言ってみた。

「そんな簡単に否定すんなよ。根拠もないだろ?

俺、確かにどこかで会ったことがあるんだよねぇ。

一度見た顔は仕事がら忘れない達だからさ。」

旦那は、寝癖のついた頭をかきながら、テーブルの方へゆっくりと歩いていった。

少しホッとしながら、少しため息が出そうなのをこらえながら、家族の待つテーブルにホットケーキを運んだ。

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