恋ふうせん
白井さんに言われるがまま体温を測ると39度もあった。

「えええ。こんなにあったんだ。びっくり。」

私は、ここまで来てようやく体が心底熱くてだるくなっているのに気づく。

「こないだ、寒い夜に歩かせちゃったからかな。」

白井さんは体温計を手にとって見つめながらつぶやくように言った。

「とりあえず、今日はこのまま早退した方がいいですよ。

これ以上熱が上がると大変ですから。」

「あ、それより白井さんのお話は?」

「僕の話は急ぎじゃないので、また今度お話します。」

「え?」

「大杉さんの上司には僕からきちんと報告しておきますから、どうぞこのままお帰りになって下さい。」

「でも、パソコンもそのままだし。」

白井さんは、困ったなぁっていう笑みを浮かべて、

「それも僕がちゃんと直しておきます。あと、」

「あと?」

「沢田さんにも必要以上に重症だって報告しておくから大丈夫ですよ。」

とうつむいて笑った。

私も体がふわふわしてきているけど、おかしくて笑ってしまった。

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