恋ふうせん
「どうしたの?何が怖かったの?」

「…ママ」

美由紀ちゃんは、少しためらいながら蚊の鳴くような声でつぶやいた。

「ママ?」

思わず反復する。

美由紀ちゃんは、何も言わず「こくり」とうなずいた。

「ママがどうしたの?怒られちゃった?」

美由紀ちゃんの目にはまた涙があふれはじめた。

肩を揺らしながら、右手で一生懸命涙をぬぐう姿があまりにも辛くて、思わずぎゅっと
抱きしめた。

その途端、堰を切ったかのように美由紀ちゃんがわんわん泣き出した。

一体何があったの?落ち着くのを待って、美由紀ちゃんにもう一度聞いてみた。

「何があったの?よかったらおばちゃんに教えてくれる?」

 できるだけ優しく。

< 63 / 221 >

この作品をシェア

pagetop