恋ふうせん
「ママね。突然私の頭をたたき出したの。

美由紀、何もしてないのに。

おうちに帰ってきた途端ね、ずっと叩くの。」

ただ、無言で聞くしかなかった。

少し精神的に弱い未知さんのことは、白井さんから聞いていたけど。

「前も同じように叩かれたの。とても痛くて、おうちの外に逃げたの。

そしたら、パパが帰ってきて助けてくれた。」

「そうなんだ。」

私はショックで大きなため息をついた。

「どうしてママは美由紀ちゃんのこと叩くんだろうね?」

美由紀ちゃんは、私のことをまっすぐ見つめて言った。

「ママはね、美由紀のことが嫌いなの。」

「ママが美由紀ちゃんのこと嫌いなんてことは絶対ないよ。」

美由紀ちゃんの肩に手を置いた。

自分の子どもを嫌う母親なんていないと、本当に思うもの。

「ママはね、美由紀の本当のママじゃないの。」

え?

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