恋ふうせん
「今日は本当に申し訳ありません。」

白井さんは深々と頭を下げた。

急いで走ってきたのか、おでこにはうっすらと汗がにじんでいる。

思わず抱きしめたくなる衝動を抑えながら、

「いいえ。こちらは大丈夫なので気にしないで下さい。」

と、できるだけ明るい笑顔を作った。

「パパ!」

美由紀ちゃんは嬉しそうに玄関の方へ飛び出してきた。

そして、裸足のまま白井さんの腰に抱きついた。

こんな時なのに、少し美由紀ちゃんがうらやましく思う自分がいる。

なさけないなぁ、もう。

白井さんは、美由紀ちゃんに靴を履かせながら、伏し目がちに言った。

「お恥ずかしい話ですが、また美由紀が今日みたいなことをすることがあるかもしれません。
その時は遠慮なく僕に連絡を下さい。」

「会社におかけしてもいいんでしょうか?」

「いえ、これが僕の携帯番号とメールアドレスです。
こちらにお願いします。」

白井さんは、自分の番号を書いたメモ用紙を私に渡した。

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