恋ふうせん
あら、めずらしい。

旅行なんて久しぶりじゃない。

「へ~、どういう風の吹き回しかしら。」

「おいおい、人聞きの悪い言い方すんなよ。

俺だって結構家族のこと色々考えてるんだぜ。」

『家族』っていう言葉に少し胸が痛い。

旦那のおみそ汁をつぎながら話を続ける。

「で、旅行ってどこに行くわけ?」

「そりゃ、皆で話し合わないといけないとは思ってるけど。

俺的には北海道なんてどうかな?なんて思ってるわけよ。」

北海道?また白井さんの顔がぼんやりと脳裏をかすめる。

テーブルにおみそ汁をそっと置いた。

「はい、用意できたからさっさと食べてよ。
私もしんどいんだから早めに寝たいし。」

旦那はゆっくりテーブルの方へ歩いてきた。

椅子に座ってお箸をとると、

「今ふと思ったんだけどさ、白井さんのご主人って、俺たちが北海道で泊まったホテルに似た人いなかったっけ?」

と、また唐突に言い始めた。

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