恋ふうせん
「咲さん、遅れてすみません。」

白井さんの声が頭の上でひびいた。

見上げると、私の会いたかった白井さんの眩しい笑顔。

うれしくなって思わず微笑む。

白井さんは私の姿を見ると、いつもより大きく目を見開いて言った。

「今日は何だかいつもの咲さんと雰囲気が違いますね。
そのワンピース、とてもよくお似合いです。」

白井さんは、そう言ってから少し恥ずかしそうにうつむいた。

その姿にまたキュンとなる。

ふふふ。

今日はいつもよりおめかししてきちゃった。

昨年買った若草色のワンピース。

なかなか着る機会がなくて、クローゼットにしまい込んでいたのを久しぶりに外の空気に触れさせたんだ。

「ありがとうございます。

このワンピースもようやく日の目が見れてうれしそうです。」

頬を染めて少年のように立っている白井さんの前で、少しだけお姉さんっぽく胸をはってみた。

「素敵です。」

白井さんは目を細めて静かにつぶやいた。

私はドキッとして、持っていたバッグをギュッとにぎりしめた。

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