恋ふうせん
「このホテルの最上階のラウンジ。食事もなかなかおいしくて、夜景もきれいに望めるんです。行ってみませんか?」

きゃー。

このホテルの最上階のラウンジなんて、普段行けそうにもない場所。

旦那とは、絶対来ないよなぁ。

せいぜい、地下にあるお好み焼き屋くらい?

ウキウキしながら、白井さんの後に続いた。

最上階までエレベーターで一気に上がると、目の前には都会の夜景が180度広がっていた。

「うわぁ!すごい。こんなにきれいな夜景見るの久しぶりです。」

思わず、夜景を見渡せる全面ガラスに走り寄った。

「それだけ喜んで頂けたら、僕も嬉しいです。」

振り返ると白井さんが微笑みながらゆっくりこちらに歩いてきた。

少し肩が触れあうほどそばに白井さんが並ぶ。

わずかに触れている肩をそのままにした。

そっと白井さんを見上げると、静かにガラス窓の向こうの夜景を眺めていた。

そして、ふいに私の方を向いた。

あまりの至近距離と、飲み込まれそうな優しい視線にドキッとして、目をそらす。

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