恋ふうせん
「ラウンジに行きましょうか。そこでも同じくらいきれいな夜景が見えますから。」

ラウンジの中も同じように全面ガラス張り。

まるで夜景上空を浮遊しているような幻想的な空間が広がっていた。

ラウンジのボーイが、

「はい、白井様でございますね。ご予約受けたまわっております。こちらへどうぞ。」

と言いながら、一番奥の窓側の席に案内した。

予約してくれてたんだ。

案内されたソファー席に座ると、あまりにやわらかくてお尻がしずみ、ひっくり返りそうになった。

思わず「きゃぁ」と声がもれた。

白井さんは優しく笑いながら、ソファーにしずみこんだ私の手をとって起してくれた。

白井さんの手。あたたかくて厚くてやわらかい。

ラウンジ内は薄暗いから、お互いの表情や顔色がはっきりわからない。

だから少し大胆な気分になる私がいる。

白井さんがにぎった手をそのままに、白井さんの顔をじっと見つめてみた。

まだお酒も入ってないのに。

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