恋ふうせん
白井さんもなかなか私の手を離さない。

視線がどこにあるのかぼんやりとしかわからないけど、私の方をじっと見つめているよ
うだった。

白井さん?

ゆっくり手をほどくと、白井さんも正面のソファーに腰をおろした。

そのうちボーイがメニューと水を運んできたので、白井さんと生ビールを頼む。

「乾杯。」

 少しくすぐったくて、二人してはにかんだ。

白井さんが、笑顔をたたえながら言う。

「何に乾杯だったのかな?」

「そうですねぇ…。初めて二人きりでお酒を飲むことに乾杯かなぁ。」

言ってから急に恥ずかしくなって、白井さんよりも先にビールを喉に流し込んだ。

「うん。そうですね。初めて二人きりのお酒ですもんね。」

白井さんは、私を見つめながら静かにビールを飲んだ。

私はビールをそっとテーブルに置いて、おつまみのチーズを口にいれる。

そして、夜景を眺めた。

ラウンジ内はムーディーなジャズが流れていて、それなりに男女の話声が響いてるんだ
けど、それが一層二人の静けさをひきたてるよう…。

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