恋ふうせん
「すみません。辛い話を聞かせてしまって…。
美由紀は早産で生死をさまよいましたが、なんとか一命をとりとめ今に至っているんです。
そして、未知はそのまま僕と結婚し、美由紀を育てることになったんです。」

「白井さん、よくここまで…。辛かったでしょう?」

「ええ。今の自分になるまでに随分かかりました。」

そう言うと、白井さんは窓ガラスのむこうの夜景を見つめた。

「…美由紀ちゃんのお母さんって、どんな方だったんですか?」

今、聞くべきではないと知りながらも、止めることができなかった。

白井さんはゆっくり夜景からテーブルの上に視線をうつした。

そして、ビールを一口飲んだ。

ビールが白井さんの喉元をゆっくりと流れていく。

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