恋ふうせん
「由梨が亡くなってから、喪失感で呆然となっている僕に未知は毎日のように会いに来てくれました。
その当時、まだ入院中の美由紀のこれからのことや、自分のこれからを考えるのに精一杯で、未知が会いに来ることが正直辛かった。
でも、ある時、未知から提案があったんです。」

「提案？」

「ええ。自分と結婚すれば、美由紀の母代わりになって面倒を見ると。そして、僕は未知の父親の経営する会社で心機一転新しい仕事を始めればいいと。」

私は、未知さんの提案にわずかに嫌悪感を覚えた。

「色々悩んで考えすぎて、どうしていいかわからなくなっていた時、その提案は現状を打破するにはベストの選択だと思ったんです。」

嫌悪感を抱いたままの私は、その言葉にうなずくことができなかった。

そんなのって。

未知さんは白井さんの弱みにつけ込んで、優しさを装って、自分の都合のいいようにしただけじゃない？

美由紀ちゃんや白井さんの気持ちをもっと考えたら、そんな簡単にできる提案じゃないもの。

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表紙・目次

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