恋ふうせん
「僕、新米なので至らないと思いますが、何でもお申しつけ下さい。」

ボーイはそういうと深々と頭を下げた。

少し紅潮した頬がうつむいた前髪の向こうに透けてみえた。

顔を上げたボーイの瞳は吸い込まれそうなほどに澄んでいて、きらきらしている。

私は思わず、旦那との喧嘩も忘れてその瞳に見入ってしまっていた。

久しぶりに見たような気がする、そんな澄んだ瞳。

「私今までイライラしてたんだけど、あなたの瞳に癒されました。ありがとう。」

思わず私の口からこぼれるように出てきた言葉。

そして、恥ずかしそうに会釈するボーイに笑った。

飛行機に乗ってから一度もゆるめることのなかった表情が一気にほぐれていくのがわかった。

旦那は横でおもしろくなさそうに「ちぇ」っと舌打ちをしている。

そのボーイは、そんな旦那の態度をちらっと横目で見て、きまずそうにうつむいた。

…って、そのボーイが白井さん?

そして、白井さんが思い焦がれていた女性って…?!

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