白狐様の秘密


「…ん?なんだ、夢かあ。」


確かに琥珀の声が聞こえた。
なんでこんなにも彼に会いたいかは分からない。
でも…。


「ううん、きっと気のせいよ。」

「気のせいじゃないよ。」

「…こ、琥珀っ?」

「うん。ただいま。」


そう言いながら私を優しく撫でてくれる。
この手がすごく安心する。


「…っ。おか、えりなさいっ。」

「よく頑張ったね。これからはずっと傍にいるから。」


なかなか泣き止むことが出来ない私を抱きしめてくれる。



…どのくらい経ったんだろう。
涙が止まると急に冷静になり、恥ずかしさが増してきた。


「あ、あの。もう大丈夫、だから///」

「そう?なんか顔が赤いよ?」

「そ、そんなことないもん。」


だって、だって琥珀が私とハグだなんて。
今考えるとめちゃくちゃ恥ずかしい。


「朝ごはん!まだだよね?食べに行こ!」


誤魔化すように先に部屋を出た。
リビングからゆきたちの楽しそうな声が聞こえてくる。


「おはよ、ゆき、ぼたん!」

「「おはようございます!」」


朝から元気いいなあ。
私、朝は苦手だからちょっと羨ましいかも。


「琥珀様、おかえりなさい。昨日のことなんですが。」

「わかっている。ゆき、よく守ってくれた。」

「ヴォルクおじさんが来てくれたんだからですよ。俺は何もできなかったです。」

「ゆきの的確な判断があったからこそ大事に至らなかったんだ。」

「そうだよ!ゆきが居てくれたから、私今こうしていられるんだから。だから何もできなかったって言わないで?」

「…はいっ。」


嬉しそうに微笑むその顔は天使のように可愛い。
すると、ゆきのとなりでぼたんが拗ねている。


「咲羅様、私は?」

「もちろん!ぼたんも私が不安に思ってた時ずっと傍にいてくれたよね。ありがと。」

「はいっ!」


満足そうににっこりと笑うとどこかへ行ってしまった。
ぼたんはクールそうに見えて、意外とヤキモチ焼きさんなんだよね。




この暖かさを壊したくない。
守るとかそんな大層なことはできないかもしれない。


でも、私になにか出来ることがあれば…


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