突然パパになりまして
「どういう事かご説明して頂けないでしょうか」

どうもこうもない。
言ったところで何かが解決するどころか更に悪くなるんじゃないかこれ……

「あ、赤ん坊を預かってまして……」
「はい、電話口から聞こえています」
「と、突然預かることになりまして……」
「はい、ですからなぜそのような事になっているのかをお尋ねしているのです」

自分の部屋からは赤ん坊の泣き声。
電話口からはこの世で一番苦手な上司の柏木。
前門の虎、後門の狼……どっちが狼でどっちが虎なのやら……

「えっと、ですね」
「はい」

フライングすぎる赤ん坊の泣き声に説明どころか、今度は何が原因で泣いてるのか気が気でなかった。

「だ、抱いてもいいでしょうか」
「……は、はぁ?!」
「へ!?……あ、いやいや!あ、赤ん坊をです!」
「あ……どうぞ。スピーカーフォンにしてくれれば良いので」

すぐさま赤ん坊に駆け寄り、昨日ネットで検索した【今日からパパになれる赤ちゃんの抱き方】の情報通りに抱き上げた。
肩とお尻に手を差し込んで……

「あぁぁぁぁん!!」
「ご、ごめ!違ったか!?」
「何されてるんですか……」

スピーカーフォンから流れる呆れた声。
いつものあの表情が脳裏に焼き付いてくる。
誰かこの場だけでもどうにかしてくれ……
< 15 / 22 >

この作品をシェア

pagetop