突然パパになりまして
今の仕事について唯一ラッキーだと思うのは、仕事場から大型デパートが近いこと。
よくバーゲンセールをやっており、夕方６時くらいになると食材がどんどん安くなる。
勿論、周りの主婦と取り合いにはなるものの安くて美味しい物を購入出来るってのは何処と無くお得って感じはする。

店内を見渡し、扉に貼ってある広告に目を通す。
今日は玉ねぎと人参が安いらしい。
６時になるともっと安くなるかもしれない。
トイレの前に立てかけてある時計に目を通し、後３０分で目的の時間になることを確認。

それまでは休憩所で時間を潰す事にした。

「ほんとうちの主人ったら子供に関心がないのか帰ってきてもただいまも言わずに自分の部屋に籠るのよ」
「わかる！うちもそう！仕事してるのは旦那だけじゃないのにね」

同じ目的の主婦なのか、周りの目など気にしてる素ぶりもないまま旦那の悪口を肴にお茶を飲んでいる２人。
携帯を忙しなく操作してる女性１人。
奥の方で携帯で誰かと話している男１人。

狭苦しい休憩所では俺も入ると、ほとんどいっぱいになってしまう。
主婦の愚痴を嫌でも耳にしてしまうのは正直苛立ちしか感じないので、静かに窓を閉め、近くの椅子に腰を下ろした。

後２５分。

携帯でも触ってればすぐさ。
俺は営業時代から使ってるビジネスバックから携帯を取り出し、触ろうとした瞬間だった。

「あの、すみません……」

話しかけてきたのはカートに沢山の食材を詰み上げ、右手にはバッグ、左手には赤ん坊を抱き抱えた女性だった。
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