突然パパになりまして
向かった先は店内の事務所。
そうするしかなかった。
この子は言わば迷子、かなり遅いけど店内放送で呼び出すのがもっとも効果的だ。
というか、本音を言うともうご飯食べてゆっくりしたいし、解放されたいんだ。

「すみません」

軽くドアを叩くと、くぐもった声が聞こえ、しばらくするときらびやかな店内とは打って変わって無機質な事務所に仕事を終えたであろう店員達が3人談笑していた。

「はい、どうされました?」

俺を……というより俺の腕の中にいる赤ん坊を見て、営業スマイルがこちらに降り注いだ。
……父親だと思われてるのだろうか。

「少々困ったことになりまして……この子の母親なんですが……」
「は……い?」

営業スマイルが一瞬にして怪訝な表情へと変わった。
まるで面倒事持ち込むなよとでも言いたそうな表情だ。
それを言いたいのはこっちだ、全く。

「とにかくこちらへどうぞ」

扉を開いた男が事務所内へと誘導してくれた。
事務所内にいた3人の店員は少し動揺した顔を見せたが、その場からすぐに離れていった。
こういうことに慣れているという事もあるのだろうが、面倒事に巻き込まれたくないというのが本音として行動に出たのかもしれない。
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