突然パパになりまして
「その子がどうされました?」

先程まで他の店員が使用していた椅子に誘導されるがままに座り、胸元のネームプレートを見ると【店長】という肩書が記してあった。
ちょうどいい。二度も三度も同じ説明をしなくて済むし、何より時間短縮になる。

「実は……」

自身の頭を整理しながら話を進めた。
前職の営業のおかげか無駄話にはならず、要点をかい摘んで話すことは出来たと思う。
ただ、我ながら思うのが……

「不思議な話……ですねぇ」

うん、俺もそう思うよ……というより「本当かよ」ってのが店長の本音だろうな。

「ご事情は分かりました。では店内放送で呼びかけてみますね」
「ありがとうございます」

話が早くて助かる。
おそらくは店内放送のボタンであろうスイッチを押し、マイクを口に近づけた。

「お客様のお呼び出しを申し上げます」

はぁ、ようやく肩の荷が下りる。
幸い赤ん坊は小さな寝息をたてて相変わらず起きる様子はない。
もっとも長時間抱いてるせいで俺の腕は限界寸前なんだけども。
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