素直にバイバイが言えるまで
「……なんで?」


私が予想していた通り、龍吾は少しの間をおいてから、怒ったように私に問った。


けれど、その理由を話してしまったら、嫌われてしまうかもしれない、と考えてしまった私は、あからさまに無言になってしまった。


冷静さを失わないようにしようとして、動きがガサガサと大きくなっているのは、すでに冷静さを失っていた証拠だろう。


冷蔵庫を開けたら人参がなくて、いつもなら「買ってきて〜」と言えるところだけれど、頼めるような雰囲気ではなかった。


小さなため息をひとつつく。

ーー今晩のメニュー、カレーですけど。


そんな普通の生活が幸せだと思えているからこそ、幸せでいたかった。

ーーせめて、今だけでも幸せでいさせてください。


私は、ただそれだけを、胸の中で強く願った。

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