素直にバイバイが言えるまで
ーーホントはそんなことじゃないの


龍吾に言われたことが、図星かもしれないと思うと、私は急に目が合わせられなくなった。


そのくせ、内心ホッとしていた自分がいる。



恋愛の醍醐味である、ドキドキとハラハラを行ったり来たりする『カケヒキ』に正直、疲れたところだった。


きっと龍吾が好きだから、無意識のうちに本気になっていて、仕事以上に気が張っていたんだと思う。


だから言葉では上手く伝えられなくて、自分から龍吾の手を握ったことは、今でも忘れていない…


そして、男の人にしては細くてきれいな指が、私の凍えた手を握り返してくれたことも、絶対に忘れたりしていない。
< 17 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop