素直にバイバイが言えるまで
そして、その話とは別に、自分の母親のことも思い出してしまって、何だか色々と考えてしまった。


結婚は2人が結ばれるだけではなく、その家族も様々な色の糸で結ばれるのだから。


私の実家はこの街から車で約1時間離れた場所ある。


小学2年のときに父と母が離婚して、それからパートに明け暮れて忙しい思いをしてお母さんは働いてきた。


今では昔ほど大変だと口にしなくなったけれど、相変わらずパートをしながら、町営住宅にひとりきりで住んでいる。


私とは違い、立派な家族の長男として生まれた龍吾。


ーーこんな私がノコノコと嫁いで、自分の母親に何かがあれば迷惑をかけちゃうかもしれない…


そうやって現実ばかり考えた。


ーーお門違いかもしれないな


私の頭の中では、夢見る天使が囁く『結婚』と、本当のことを叩きつけるように悪魔が囁く『現実』が離れなかった。



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