素直にバイバイが言えるまで
本気で好きということ
だからレシートを見つけたとき、後悔した思い出が一気に頭を過った。


私は部屋の真ん中に立ち尽くし、川西龍吾という名前をしばらくの間見つめていた。


ーー今どこにいて、何をしてるんだろう


次の瞬間、レシートをテーブルの上に置くと、私は勢いよく部屋を飛び出していた。


アパートの階段をダダダダと、落ちそうになりながら降りる。


そして一目散に龍吾がバイトをしていたレンタルショップへと、自転車を走らせていた。


気がつけば手は痛いほど冷たく、吐く息だって真っ白なのに、顔だけが火照ったように熱かった。


買ったばかりのニット帽がすぐそこに置いてあったのに、目に入らないくらい慌てていたのかもしれない。


自分でも驚けほど素早く、それは無意識の行動だった。

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