素直にバイバイが言えるまで
素直な気持ち
「大丈夫?」

教官の声で我に返った。


昨日のそんな行動に、自分でもすごく驚いていて、あまりにも切ないこの気持ちを、どうしていいかわからなかった。


いつものような平常心を保つことが、こんなにも難しいなんて思ったこともない。


教習車が大通りを抜けてしばらくすると、工事中の橋に差し掛かった。


ここは、時々、龍吾と2人で手を繋いで散歩に来る通りでもあった。


月がきれいに映り落ちる都会の小さな川に架かる橋が、工事中になったことなんて、龍吾はきっと、知らないと思う。


変わってゆく景色、と、変わらない川。


『形あるものは変わるのだ』


ーーどこかで聞いたけど、私たちも変わっちゃったのかな?




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