素直にバイバイが言えるまで
突然、私の目の前にあるすべてのものが輪郭を失って、ゆらゆらと揺れ始めた。


そうだ…


たったひとつだけ言い訳がある。


近い将来、社会人になったばかりの龍吾が、結婚というプレッシャーに押し潰されないよう、と、勝手に思い込んでしまった。


でも、実際は逆だった…


すごい歳下の彼なんて初めてだった。


プレッシャーだらけになっていたのは私の方で、素直になれず、本心を伝えられなかった。


たったそれだけのことだった。


龍吾のプライドを傷つけてしまったのは、間違いなく私なのだ。


それなのに私は自分の立場ばかり考えてしまっていた。


可哀想な自分ーーだとばかり思っていたけれど、大間違いだったことに今頃気がついた。


私はハッとした。






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