名探偵の導き
途中、道に迷ったのではないかと思った。ペンションに明かりが灯っていなかったからだ。車のヘッドライトが『パライソ』という看板を照らし、そこにあるとわかった。
インターホンを押しても応答がなく、ドアには鍵がかかっていた。
「あれ、おかしいな」
頬を切り裂くような風。それに追い討ちをかける吹雪の中で不穏なものを感じた。
「寒っ」
フラッシュバックする冬木の癖のある笑顔。
聖花を迎えに来た時、顔の左半分がぎこちなかった。
そう言えば、初めて聖花を紹介した時もそうだった気がする。
その後、冬木から頻繁に連絡が来るようになった。親のペンションを継いだから彼女を連れて泊まりに来い、と。何度も何度も、しつこいくらいに。
もしかして……。
不慣れな雪に足を取られながらも急いで裏口へと向かい、ドアノブに手をかけた。
「開いてる」
スマホの明かりを頼りに慎重に中へ入る。