ネグレクト
泥に埋もれて這いつくばってる私がいる。

体中がべとべとして身動きとることが出来ない。

声を出そうにも声を出すことができない。

ホントは大きな声を出したいのに

伝えたいことがたくさんあるのに

なんとか口をひろげて声を出そうとするけど

そうすると泥が口の中に入ってきて声なんて出すことが出来ない。

あーーーーーーー

あーーーーーーーーーーーーー

あーーー


体が揺さぶられる。
ゆっくりと塗りつぶされた世界から抜け出る。

目の前には男の顔が

「だれ?」

「俺だけど…どうした?大丈夫か?」

「あぁ。うん。大丈夫。」

寝ぼけて、誰だかよくわかんなかったけど返事する。

「お前ホントに大丈夫?時々すごい苦しんでるよ。つーか寝てるとき
いっつもすげーつらそうにしてるんだけど…」

「よくやな夢みるんだ。そんなのみんなもあるでしょ?おんなじ…
関係ないよ」

「…」
男は怪訝そうな顔でこちらをのぞきこんでいる。

「なに?」
わたしは、その心配そうな目つきにイラだって怒った口調になる。
「いや、なんでもないけど…」
「なに?なんかいいたいことあんの?」
「ん…いいよ。きかれんのやだろ?」
男は、申し訳なさそうに言う。
「特に言うこともないから、聞かれてもこまるけどね」

やっと頭が冴えてくる。
横にいるのがシュウだってこともわかってきた。
あいつらがいないことに感謝している。

「そろそろ時間でしょ?ホテルでないと。延長とられてもこまるし」
わたしは、パンツを探しながらシュウにいう。
「今日とまんない?」
「え?」
「いや、やっぱなんでもない」
シュウの言葉は私は聞こえていたけど聞こえていない振りをする。シュウにもそんなことはばれてるけど気にしない。

「そう」

わたしは、いつものように1人でホテルででて1人で家に帰る。



ホテルから誰かと一緒に出るなんてごめんだし。

誰にも家の場所なんてしられたくない。
< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop